生前葬で「ありがとう」を伝える介護施設の挑戦
- 訪問レポート
- 2025/05/16
「生前葬」というユニークな取り組みを通じて、入居者様やそのご家族に特別な時間を提供している介護施設長設「ツクイ町田東館」。
今回は、この取り組みを主導した施設長設長の竹内さんにお話を伺いました。
入居者様の「夢を叶える」活動がどのようにして始まり、どのような影響を与えているのかを紐解きます。
「『ありがとう』を伝えたい」からはじまった生前葬
MY介護の広場(以下、大野):こちらの施設で「生前葬」を行ったとお聞きしました。とてもユニークな取り組みですね。どのようなきっかけで始められたのですか?
施設長:ありがとうございます。最初から計画していたわけではなく、ある入居者様の「生きているうちに、自分を支えてくれた人たちに『ありがとう』を伝えたい」という一言がきっかけで「何かお手伝いできないか」と考えたのが始まりです。
大野:入居者様の思いを形にするために、具体的にどのような準備や運営をされたのですか?
施設長:まず、ご本人様とご家族にヒアリングを行い、どのような形の生前葬が理想かを話し合いました。
そもそも私たちも生前葬に詳しいわけではないので、葬儀屋に聞いたり、ネットから調べたりしました。その後、昔の職場仲間や友人、ご家族を招待するリストを作成しました。
どんどんゲストが増えていったのですが…(笑)
また、ご家族とも話し合い「生前葬」という表現を避け、「感謝の会」として参加者の方を招待することにしました。
事前に奥様やご家族から思い出の写真やエピソードを集め、それを基にDVDを制作。当日は施設内にセレモニールームを用意し、感謝の言葉やエピソードを共有する時間を設けました。
大野:ヒアリングから準備、当日の運営まで、かなりの時間と手間がかかったのでは?
施設長:そうですね。準備期間は約2ヶ月ほどでしたが、ご本人様やご家族と何度もやり取りを重ねました。
また、招待状の作成や当日の流れを考える際にも細部にこだわりました。ただ、そういった手間を惜しむことなく取り組めたのは、ご本人様の「ありがとうを伝えたい」という強い思いがあったからです。
特別な時間を共有することで生まれた変化
大野:生前葬を通じて、入居者様やご家族にはどのような変化が見られましたか?
施設長:ご本人様は、イベント中も終涙を流されていて「ありがとうを伝えられて良かった」と繰り返しおっしゃっていました。
その姿を見て、ご家族も「私たちも改めて感謝の気持ちを共有する機会をいただけた」と感動されていました。
また、施設全体にも良い影響がありました。他の入居者様が「自分もやってみたい」と言い始めたり、スタッフが積極的に「次はどんな形で夢を叶えられるか」とアイデアを出すようになったりと、ポジティブな変化が広がっています。
大野:生前葬が一つのきっかけとなり、施設全体の雰囲気も明るくなったのですね。
施設長:はい。普段の介護業務に追われがちなスタッフたちも、この取り組みを通じて「ただの日常」ではなく「特別な日」を作り出す喜びを感じることができました。
入居者様だけでなく、スタッフの成長やモチベーション向上にも繋がったと思います。
大野:施設で生前葬を行うことのメリットはどのような点にあったと感じていますか?
施設長:まず、入居者様にとって安心できる場所で開催できるというのが大きなメリットです。
環境に慣れているからこそ、自然体で感謝の気持ちを伝えることができます。
また、スタッフが全面的にサポートすることで、ご家族の負担を減らせるのも重要なポイントです。
さらに、こうした取り組みを行うことで施設全体に温かな雰囲気が生まれ、他の入居者様やスタッフにも良い影響を与えられると感じています。
入居者様の「夢を叶える」取り組み
大野:生前葬以外にも「夢を叶える」活動を行っていると伺いました。それについて教えていただけますか?
施設長:はい、ある入居者様が「華道をもう一度やりたい」という夢を話してくださいました。
その方は以前から華道に親しんでおられたのですが、長らく離れていたそうなんです。
そこで、私たちは地元の華道家の方に協力をお願いし、大きな花を使った生け花を玄関に飾っていただくようにしました。
最近では施設内でイチゴ狩りを楽しめるようにプランターを使って再現したりもしました。
こうした日常を彩る取り組みを通じて、入居者様が「ここで暮らすのが楽しい」と思える環境作りを目指しています。
大野:こうした活動は、入居者様だけでなく、スタッフの皆さんにとっても良い影響がありそうですね。
施設長:そうですね。スタッフたちも「次はどんな夢を叶えられるだろう」と前向きに取り組む姿勢が生まれています。
また、こうした活動を通じて入居者様との信頼関係が深まり、「もっと頑張ろう」という気持ちが自然と芽生えるようです。
施設長が描く未来
大野:最後に、施設長として今後の目標や夢を教えてください。
施設長:これからも入居者様一人ひとりの「夢を叶える」お手伝いを続けていきたいです。
また、スタッフたちがこうした取り組みを通じて成長し、施設全体がより良い場所になるようにしていきたいですね。
特に、入居者様が「自分らしく生きる」瞬間を支えることは、私たちにとっても大きな喜びです。
これからも180名の入居者様やご家族が「ここを選んで良かった」と思える施設作りを目指します。
大野:本当に素晴らしいお話をありがとうございました。施設全体で入居者様やご家族を支えている姿がとても印象的でした!
インタビュー施設: ツクイ・サンシャイン町田東館

ツクイ・サンシャイン町田東館は、東京都町田市小山ヶ丘に位置する介護付有料老人ホームです。2014年7月に開設され、全180室の個室を提供しています。
レクリエーションやクラブ活動など、さまざまなアクティビティを提供し、入居者様の生活に彩りを添えています。
また、施設内には栄養士が常駐し、毎食作り立ての美味しく健康的な食事を提供しています。
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