医療リハビリと介護リハビリの違いとは?医療保険と介護保険は併用できる?
- 介護に関するお役立ち情報
- 2024/11/07
リハビリには医療保険と介護保険による2つの種類があり、それぞれ目的や利用条件が異なります。
医療リハビリには利用日数制限の目安があり、介護リハビリへの移行が必要になることも。両者の違いや併用の可否、医療リハビリ日数上限の通称「150日ルール」の詳細を理解することが大切です。
この記事では、自分に合ったリハビリを選択するためのポイントを解説します。
- 医療リハビリと介護リハビリの違いとは
- 医療リハビリの通称「150日ルール」とは
- 医療リハビリと介護リハビリの併用はできるか
- リハビリ難民問題と自費リハビリという選択肢
- リハビリを始める際の重要ポイント
- まとめ
- ライター プロフィール
- 監修者
- リハビリ対応の老人ホームや介護施設をお探しの方へ
- 老人ホーム入居相談はこちら(無料)
医療リハビリと介護リハビリの違いとは
リハビリテーションには「医療リハビリ」と「介護リハビリ」の2種類があり、それぞれ目的や内容、適用される保険制度が異なります。
この違いを正しく理解することで、自分や家族に最適なリハビリを選択することが可能になります。
医療リハビリの特徴と目的
医療リハビリは、病気やけがが発症した急性期から回復期において、医療保険を利用しておこなわれるリハビリです。
医療リハビリの主な特徴
- 実施場所:病院、診療所などの医療機関
- 対象者:国民全員(年齢制限なし)
- 費用負担:医療費の1~3割(年齢・所得による)
- 実施期間:疾患別に日数上限の目安あり
- 目的:病気やけがによって低下した身体機能の回復、治療と並行した機能改善
医療保険で実施される疾患別リハビリと標準的算定日数
医療保険でのリハビリは、疾患ごとに分類され、それぞれに標準的算定日数(日数上限の目安)が設けられています。
| 疾患別リハビリ名 | 主な疾患・症状 | 日数上限の目安 |
|---|---|---|
| 心大血管疾患リハビリテーション | 急性心筋梗塞、狭心症、開心術後、大血管 疾患など | 150日 |
| 脳血管疾患等リハビリテーション | 脳梗塞、脳腫瘍、脊髄損傷、パーキンソン病、 高次脳機能障害など | 180日 |
| 運動器リハビリテーション | 上・下肢の複合損傷、脊椎損傷による四肢麻 痺、運動器の悪性腫瘍など | 150日 |
| 呼吸器リハビリテーション | 肺炎・無気肺、肺腫瘍、肺塞栓、慢性閉塞性など | 90日 |
| 廃用症候群リハビリテーション | 長期臥床や安静による不活動を原因とした心身機能の低下 | 120日 |
これらの日数は、発症日、手術日、急性増悪日、または最初に診断された日のいずれか早い日から起算されます。
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)第423回 2019年9月18日(令和元年9月18日)個別事項(その1)(リハビリテーション、医薬品の効率的 かつ有効・安全な使用)
介護リハビリの特徴と目的
介護リハビリは、急性期と回復期を過ぎて状態が安定した維持期・生活期において、介護保険を利用しておこなわれるリハビリです。
介護リハビリは対象者の規定があり、要介護・要支援認定を受けていることを条件に、年齢が65歳以上の高齢者、または40~64歳で特定疾病の診断を受けている方が対象となります。
介護リハビリの主な特徴
- 実施場所:介護老人保健施設、通所リハビリ施設、自宅(訪問リハビリ)など
- 対象者:65歳以上で要介護・要支援認定を受けた方(40歳以上65歳未満は特定疾病がある場合に対象)
- 費用負担:介護サービス費用の1~3割(所得による)
- 実施期間:日数制限なし
- 目的:身体機能や生活機能の維持・向上、日常生活の自立支援
介護リハビリは日数制限がないため、長期的に継続してリハビリを受けられる点が大きな特徴です。
医療リハビリの通称「150日ルール」とは
日数上限の目安を超えても医療リハビリを継続できる例外規定がある
先にも記載したとおり、医療リハビリには疾患別に、90日・120日・150日・180日と標準的算定日数という日数上限の目安が設定されていますが、これを通称「150日ルール」と呼びます。
150日ルールは、効果が不明確な長期リハビリへの指摘を受けて2006年4月に導入されました。早期集中型の効果的なリハビリを促すとともに、増え続ける医療費を抑制し、適正に配分する狙いがあります。
しかし、一定の条件を満たす場合は上限を超えてリハビリを継続することが可能です。
医療リハビリの継続が認められる条件
以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
2. 介護保険による要介護・要支援認定を受けていない、または入院中の状態であること
3. 医学的にリハビリの継続により改善が見込めると判断されること
出典:厚生労働省 令和6年度診療報酬改定について 特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件 令和6年厚生労働省告示第59号
医療リハビリ継続時の制限
なお、標準的算定日数を超えてリハビリを継続する場合、月13単位(1単位20分)までという制限があります。つまり、1か月あたり最大260分のリハビリとなります。
出典:厚生労働省 平成24年度診療報酬改定について 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)平成24年厚生労働省告示第76号 第2章 第7部 リハビリテーション
労災保険の場合は日数制限なし
労災保険が適用される場合は、150日ルールの対象外となります。医師が必要と判断すれば、期間を気にせずにリハビリを継続することが可能です。
出典:厚生労働省 労災診療費算定マニュアル 令和7年4月版
医療リハビリと介護リハビリの併用はできるか
原則として併用は認められない
医療保険と介護保険は原則として併用できません。両方の保険に加入している場合、介護保険が優先されます。
これは、介護保険が適用になるサービスは医療保険を適用しないと法律で定めているためです。
つまり、要介護・要支援認定を受けている方が、同一の疾患について医療リハビリと介護リハビリを同時に受けることは基本的にできません。
併用が認められる例外ケース
ただし、以下のような場合には例外的に併用が認められます。
1. 異なる診断名でのリハビリ
介護リハビリを利用している方が、別の疾患で医療リハビリが必要になった場合は、異なる診断名であるため併用可能です。ただし、医師の明確な指示が必要となります。
2. 医療リハビリから介護リハビリへの移行期間中の併用
医療保険のリハビリから介護保険のリハビリへスムーズに移行するため、一定期間の併用が認められています。
- 条件:医療機関とは別の施設で介護リハビリを提供する場合、介護保険のリハビリをおこなった日を除く日に対し、医療保険のリハビリを適用する
- 制限:開始日の翌月および翌々月は、医療保険のリハビリを月7単位(140分)まで算定可能
この移行期間の設定により、医療から介護への円滑な移行が期待できます。
【例】4月15日に介護保険のリハビリを開始した場合
4月(利用開始月)
医療保険のリハビリ:制限なし
介護保険のリハビリをおこなった日を除き、医療保険のリハビリを算定可能
5月(翌月)
医療保険のリハビリ:月7単位(140分)まで算定可能
介護保険のリハビリをおこなった日を除き、医療保険のリハビリを算定可能
6月(翌々月)
医療保険のリハビリ:月7単位(140分)まで算定可能
介護保険のリハビリをおこなった日を除き、医療保険のリハビリを算定可能
7月以降
医療保険のリハビリは原則算定不可
介護保険のリハビリのみ利用
※同じ日に医療保険と介護保険のリハビリを重複して受けることはできません。
3. 医療リハビリから介護リハビリへ移行したものとはみなさないケース
目標設定等支援・管理料(リハビリ方針と目標の設定)を算定してから3か月以内に、紹介された事業所で介護保険のリハビリを体験する目的であれば、1か月に5日を超えない範囲で併用が可能です。この場合、医療保険から介護保険に移行したとは見なされません。
4. 手術や急性増悪の場合
介護リハビリを利用している方が、手術や急性増悪(症状が急に悪化すること)により医療リハビリが必要となった場合は、医療保険を適用できます。
出典:厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に 関連する事項等について」の一部改正について 令和6年3月27日
リハビリ難民問題と自費リハビリという選択肢
リハビリ難民とは
医療保険によるリハビリの日数上限に達したあと、介護保険に移行しても希望するリハビリを受けられない方が増えています。これが「リハビリ難民」と呼ばれる社会問題です。
リハビリ難民が生まれる背景
- 医療保険のリハビリは機能回復を目指す集中的な内容
- 介護保険のリハビリは機能維持・向上が目的
- 介護保険では1日のリハビリ時間が介護度や他サービスとの関係で制限される
- 集中的な機能回復リハビリを継続したくても、制度上受けられない
2019年4月に「要介護・要支援者への維持期・生活期リハビリの、医療保険給付から介護保険給付への移行」が完全実施されたことで、この問題はさらに顕在化しました。
参考:厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第410回)平成30年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準等の取扱いについて
保険外の自費リハビリとは
このようなリハビリ難民の受け皿として、保険を使わない「自費リハビリ」というサービスが急伸しています。
自費リハビリのメリット
- 個別の希望に合わせたオーダーメイドのプログラムを組める
- 集中的なリハビリを継続できる
- 専門的なスタッフによる質の高いリハビリを受けられる
自費リハビリのデメリット
- サービス内容や料金が事業所によって大きく異なる
- 医療機関との連携体制が事業所によって異なる
- 緊急時の対応体制を事前に確認する必要がある
自費リハビリを検討する際は、何のために利用するのか目的を明確にし、料金やサービス内容、医療機関との連携体制などを事前にしっかり確認することが重要です。
出典:矢野 秀典 . 多様化するリハビリテーション連携 . リハビリテーション連携科学 . 2025 , 第25巻 , 第2号 , p.46-54 .
リハビリを始める際の重要ポイント
保険制度とサービスの違いを理解する
医療保険のリハビリと介護保険のリハビリでは、制度の違いにより受けられるサービスが異なります。自分の状態や目的に合わせて、適切なリハビリを選択しましょう。
医療から介護へのスムーズな移行を計画する
医療リハビリを利用している場合は、リハビリ期間の目安を主治医やリハビリ担当者に確認し、介護リハビリへの移行計画を立てることが重要です。移行期間を活用することで、切れ目のないリハビリを継続できます。
ケアマネジャーを活用する
介護保険のサービス利用については、ケアマネジャーが中心となって調整します。介護リハビリの利用を検討する場合は、必ずケアマネジャーに相談しましょう。
まとめ
医療リハビリと介護リハビリは、それぞれ異なる目的と制度のもとで提供されています。医療リハビリは急性期から回復期における機能回復を目指し、介護リハビリは維持期・生活期における機能維持と生活の質向上を目指します。
両者の併用は原則として認められていませんが、移行期間中や異なる診断名の場合など、例外的に認められるケースもあります。医療リハビリの標準的な期間や制度を理解し、計画的にリハビリを進めることが重要です。
リハビリ難民にならないためにも、医療保険から介護保険への移行を早めに計画し、必要に応じて自費リハビリなどの選択肢も検討しましょう。
何よりも、主治医やリハビリ専門職、ケアマネジャーと十分にコミュニケーションを取りながら、自分に最適なリハビリを継続することが、その人らしい生活を取り戻すための鍵となります。
ライター プロフィール
<野田 裕貴氏>
高校3年生の時の入院をきっかけに、看護師を目指す。看護学校を卒業後、地元の大学病院へ就職。緩和ケア、ICU、血液内科を経験し、幅広い看護を学ぶ。また、部署での看護ケアと平行し、看護研究や災害派遣、学生への講義、海外病院視察など、さまざま経験。
新卒から11年勤務した大学病院を、独立のために退職。これまでに身につけた知識やスキルを活かし、医療や働き方についての記事を執筆するライターとなる。
監修者
<藤井 寿和氏>
合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
陸上自衛官を経験後、介護の仕事に転身。医療法人の事業部統括マネージャーに就任した後、独立。
● 介護施設 現場支援コンサルタント
● レクリエーション介護士1級・2級 公認講師
● 介護情報誌「介護Times Tokyo」および「TOWN介護Tokyo」編集長
リハビリ対応の老人ホームや介護施設をお探しの方へ
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