経管栄養とは?経管栄養による補給法についても紹介!【看護師経験者によるライティング記事】

  1. 経管栄養とは?
  2. 経管栄養法にはいくつか方法がある!?
  3. 経管栄養中に注意すべきことは?
  4. 栄養剤注入中の緊急時の対処法は?
  5. 口から物を食べられるようになる可能性はある?
  6. 経管栄養についてよくある質問を紹介!
  7. 経管栄養により家族介護が難しい場合は?
  8. 介護のお役立ち情報を随時配信!
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加齢や病気によって食事が食べられなくなると栄養状態が悪化し衰弱してしまうことがあります。それを防止するためには、個々に応じた適切な栄養管理で栄養状態を保つことが必要です。そのため、経口摂取が不可能な人に対して消化管内にカテーテルを挿入し栄養剤を注入する「経管栄養」が行われます。病状や状況に応じて様々な方法があるため、今回はその特徴や方法についてご紹介します。

当コラム内容について

経管栄養について、インタビュアーに専門家の1見解をもとにまとめました。
以下でご紹介する内容で異なる場合もあるかもしれませんが、ご理解の程よろしくお願い致します。

経管栄養とは?

消化管内にカテーテルを挿入して栄養剤を注入する行為!

経管栄養とは、口から栄養を取ることが難しくなり、栄養状態が悪化した人に対して行います。栄養状態の改善、維持を目的に栄養補給を実施しますが、その方法は大きく分けて2つあります。

一つは胃や腸に直接栄養剤を注入する「経腸栄養」。もう一つは栄養輸液剤を静脈内に投与する「経静脈栄養」の2種類です。どのような栄養方法を行うかはその人の状況や病態によって選択されます。

基本的には、消化管が使用できるかの判断で経腸栄養、経静脈栄養で分かれることが多いです。また、消化管を使用する経管栄養では、カテーテルを鼻から挿入して胃の中まで通して栄養剤を注入する「経鼻経管栄養」と胃や腸に穴を造設して直接栄養剤を注入する「胃ろう栄養・腸ろう栄養」があります。
その選択方法は期間によって違いがあり、短期間(4週間以下)では経鼻経管栄養、長期間(4週間以上)では胃ろう・腸ろう栄養が行われます。

経管栄養法にはいくつか方法がある!?

胃に穴を開ける『胃ろう』での方法

胃ろうは、内視鏡下でお腹から胃に穴をあける手術を行います。そのため、手術中や手術後に合併症が起こることがあります。胃ろうが造設されると、その穴にはカテーテル(管)が通され直接栄養剤を注入することが可能です。胃ろうのメリットは、経鼻経管栄養に比べて誤嚥や逆流のリスクが低い点です。また、本人の状態によっては入浴やリハビリテーションなどの活動が可能です。カテーテルが衣服に覆われていると分からないので、見た目にも目立つことがありません。経口摂取との併用もできるので、口から食事が食べられるように嚥下訓練を兼ねたリハビリを実施することができます。

『胃ろう』は食べる機能を取り戻す訓練!

「胃ろうを造設すると一生口から食事ができなくなってしまう」と思いがちですが、口から飲み込む力(嚥下)を訓練することで、食べる機能を取り戻すことができます。そのために胃ろうを用いて栄養状態や体力を回復させる必要があるのです。しかし嚥下訓練が難しい重度の方もいるので、全てではありません。

腸に穴を開ける『腸ろう』での方法

腸ろうは胃ろうに比べて様々な制限があるため、胃ろうが可能であれば胃ろうの造設を行います。しかし、胃に病気があったり、誤嚥や嘔吐が激しかったりする場合は、腸ろうが選択されます。腸ろうのカテーテルは胃ろうに比べて細くて長いので、栄養剤が詰まりやすくなるのが難点です。

腸ろうの注入経路は2種類!

腸ろうの注入経路には、2種類あります。内視鏡下で胃ろうを造設し胃から十二指腸、空腸へカテーテルを留置する方法、お腹から空腸に穴を造設しカテーテルを挿入する方法があります。腸は胃に比べると内腔が狭く、栄養剤を溜めておくことができないので、注入の速度にも注意が必要です。

静脈の血管に栄養を投与する方法

静脈血管を使って栄養補給を行う理由には、消化機能が低下もしくは使用できないと判断された場合に実施されます。輸液製剤を投与する方法には2種類あります。腕の末梢静脈から行う「末梢静脈栄養」と、心臓部に近い最も太い血管の中心静脈から投与する「中心静脈栄養」です。末梢静脈栄養は比較的容易に行うことができますが、低濃度の輸液製剤を使用するので十分なエネルギーを確保することが難しく長期管理ができません。

長期間経口摂取ができない方は『中心静脈栄養』!

一方、栄養状態が悪い人や経口摂取ができない人には、高エネルギーを投与できる中心静脈栄養が行われます。中心静脈とは心臓の近くにある血流量の多い太い血管です。そのため、高カロリーの輸液を投与しても、瞬時に多量の血液によって流れることで、輸液の濃度が薄まるので血管に負担がかかることが少ないです。体に必要な栄養素を補給することが可能なので、長期間経口摂取ができない人に用いられます。しかし、カテーテルを心臓部まで挿入するので、合併症やカテーテルに関する感染の危険があります。

経鼻経管栄養での方法

経鼻経管栄養は、カテーテルを鼻から食道を通して胃や十二指腸、空腸などに留置させ、栄養剤を注入する方法です。おもに意識のない人、食事の飲み込みが上手くできない人、全身の衰弱が見られる人などが適応になります。必要な栄養素を容易に摂取できますが、胃食道逆流や誤嚥性肺炎などの合併症の危険があるので、あくまでも一時的な処置になります。長期(4週間以上)に及ぶ場合には「胃ろう」の適応となります。

カテーテルの先端の挿入確認が重要!

経鼻経管栄養を実施するには、カテーテルの先端が確実に胃や十二指腸、空腸内にあることを確認します。胃内に挿入されていない場合、誤って注入してしまうと気管内へ入ってしまい、重大な事故につながる危険があります。そのためにも、カテーテルチップシリンジを用いて、胃内に空気を送り込んで音を聴取する「気泡音の聴取」や「胃内容物の吸引」を行います。とくに信頼性のある確認方法は、レントゲン撮影で位置を確認する「X線像」になります。

挿入確認後は『適宜観察』

カテーテルの先端を確認した後は、適切な体位(ファーラー位)になり、セットされたイルリガードルと栄養チューブを接続します。滴下を開始した際には、急なむせ込み、呼吸状態、悪心、嘔吐、腹部症状などを適宜観察しますが、ほかにも注入速度、投与ラインの絡まりや屈曲、固定、姿勢、接続部の緩みなども一緒に観察します。また、カテーテルが入っていることに不快感が強く、自分で抜いてしまうことが少なくありません。自己抜去の危険性が高い人(認知症など)に対しては、カテーテルが見えないように背部にまとめてテープで留めておくなど工夫が必要です。

注入後は『嘔吐や誤嚥、感染予防』

注入が終了したらカテーテルチップシリンジを用いて白湯(20~30ml)を注入し、カテーテル内部を洗い流すことで閉塞や感染を防ぎます。終了後は嘔吐や誤嚥を防ぐために30~60分はベッドで横にならないように伝えます。そのとき同一姿勢を長時間続けるためクッションを使って除圧を行うなど、安楽な姿勢を心がけましょう。

経管栄養中に注意すべきことは?

注入中は全身状態の観察が必要!

経管栄養を実施する際は、様々なことを観察、確認したうえで実施しますが、経管栄養中に不慮な事故が起こったり、急な体調の変化が起こったりすることが考えられます。そのためにも経管栄養中の観察ポイントや注意すべき点、感染予防について下記の内容を確認しましょう。

30度以上の『半座位もしくは座位に近い姿勢』で行う!

経管栄養を実施する際は、胃食道逆流(胃の内容物が逆流)や誤嚥を予防するために、必ず体位を整えてベッドを30度以上の半座位もしくは座位に近い姿勢で行います。そのため、注入中に姿勢が崩れたりする場合があるので、適宜様子を観察します。

開始時の速度(一般的に50mL/時)には注意!

注入直後は悪心、嘔吐などの腹部症状が起こる場合があるので、開始時の速度をしっかり守り観察を行います。(一般的に50mL/時)

栄養剤は開封後8時間以内に投与!

栄養剤は開封後8時間以内に投与し終わるようにします。なぜなら、8時間以上経過した栄養剤は菌が繁殖しやすくなるためです。また、残していたものを再度使用することも食中毒の原因につながるため避けましょう。

栄養剤のカテーテルの状態は要注意!

栄養剤のカテーテルが体動や姿勢によって屈曲したり、引っ張られていたりすることがあるので注意します。

経管栄養中の全身状態の観察!

経管栄養中は適宜、全身状態の観察を行います。 悪心、嘔吐、胃の不快感、お腹の張り(腹部膨満感)、腹痛、下痢、むせ込み、呼吸状態など

カテーテルが抜けないよう注意!

経管栄養中でも体動や姿勢などちょっとしたことがきっかけで、カテーテルが引っかかり抜けてしまうことがあるので、注意が必要です。胃ろうの場合、カテーテルが抜けると数時間のうちに胃ろう部分が縮小し、およそ24時間で閉鎖してしまいます。

栄養剤注入中の緊急時の対処法は?

直ちに注入を中止する!

注入中の緊急時はまれにあります。しかし、そのときの対応方法を知っておくことで大きなトラブルを避けることができます。
注入開始後に急なむせ込みと呼吸状態(SPO2低下、呼吸促拍など)に変化があった場合は、栄養剤が気管内に流れて誤嚥している可能性があります。その場合は直ちに注入を中止し医師、看護師に報告を行います。その際、体の中の酸素状態を把握するためにSPO2を測定します。

急激に数値が低下した場合は窒息の恐れがあり、生命に危険が及びます。そのため、経管栄養を開始直後はしばらく様子を観察し、異常の早期発見に努めることが大切です。また、事前にチューブが正しい位置にあるのかしっかり確認を行っておくことが重要です。

カテーテルが『抜けてしまった、抜いてしまった場合』

また注入中にカテーテルが抜けてしまう、抜いてしまう事例も多くあります。とくに胃ろうのPEGカテーテルは抜けたままにしておくと24時間以内に穴(ろう孔)が閉じてしまいます。発見した場合は慌てず、緊急連絡網もしくは医師などに連絡、報告を行い、指示を仰いでください。その時、カテーテルの確認(ストッパーが付いているかなど)や出血、栄養剤の漏れなどはふき取り、清潔なガーゼで覆っておきましょう。

口から物を食べられるようになる可能性はある?

『口腔ケア、筋力トレーニング』を行うことで可能性あり!

経管栄養を行うと一生口から食べられなくなると思いがちですが、あくまでも一時的な役割があります。嚥下障害のある人はゆっくり食事を取るため、必要以上に時間がかかります。食事することに疲れてしまうことで、十分な食事量が摂取できず栄養不足になり衰弱してしまいます。無理に経口摂取を続けることで、誤嚥を起こし誤嚥性肺炎にもなりかねません。そのために一度必要な栄養素を十分に取り、体力を取り戻すために経管栄養が選択されます。

目標は「全身状態を整え、経口摂取ができること」です。そのためにも口から食べられるようにリハビリする嚥下訓練を行います。 嚥下訓練には。食事を用いないで行う「間接嚥下訓練」と食事を用いた「直接嚥下訓練」があります。間接嚥下訓練ではアイスマッサージや頸部ストレッチ、発声訓練などがあります。いずれも食べるために必要な器官を改善するものです。なかでもアイスマッサージは口腔ケアと同時に行うことがあります。綿棒やスポンジブラシ(口腔ケア用)を氷水につけるか、凍らせたものを舌の奥、咽頭後壁、軟口蓋など軽く押したり、さすったりして嚥下反射を誘発させます。直接嚥下訓練では、実際に食べ物で嚥下する力を改善していくので、誤嚥しないように注意が必要です。おもには、姿勢の調整、一口量の調整、食形態に留意しながら、液状、ペースト状など食事内容や量、回数など徐々に進めます。もちろん口腔ケアは経口摂取が少なければ少ないほど必要になります。口腔内は咀嚼による唾液分泌が低下しているので汚れやすく菌の繁殖もしやすい状態です。そのため汚れた唾液を知らず知らずのうちに誤嚥してしまうことで、誤嚥性肺炎を引き起こすケースは少なくありません。そのためにも毎日の口腔ケアを継続し、経口摂取を目標にしましょう。

経管栄養についてよくある質問を紹介!

Q:経鼻経管栄養や胃ろうができない人は?

それぞれ消化管機能の低下や消化管穿孔、腸炎などがある場合は禁忌もしくは慎重に留置を行います。経鼻経管栄養では、鼻腔、口腔、食道に障がいがある場合、チューブが挿入できないので、胃ろうが選択されることがあります。
一方、胃ろうでは、手術が行われるため、栄養状態が著しく悪い、高熱、出血が止まりにくい、終末期にある人は胃ろうの造設が難しいとされています。

Q:経管栄養の合併症にはどんなものがありますか?

経鼻経管栄養、胃ろうの合併症には、下記のようなものがあります。

・カテーテル挿入によるスキントラブル
経鼻経管栄養では、日々のカテーテルが圧迫され続けることによって皮膚に発赤や潰瘍、出血などが生じやすくなります。また胃ろうでは、穴(ろう孔)部分では、出血や感染、潰瘍などのトラブルがあります。

・悪心、嘔吐
急に胃内に栄養剤が入ることで起こりやすくなります。また、注入速度が速く短時間に大量の栄養剤を注入することで生じやすくなります。誤嚥性肺炎の原因にもつながります。

・誤嚥性肺炎
おもに経鼻経管栄養で起こりやすくなります。胃内に留置しているチューブをつたって胃内容物が逆流することで、誤嚥を起こし誤嚥性肺炎が生じることがあります。

・下痢
栄養剤の温度が低かったり、注入速度が速かったり、もしくは乳糖不応症の場合に下痢が起こりやすくなります。また栄養剤は基本的に防腐剤が使用されていないので、細菌の繁殖によって引き起こす可能性があります。

取材協力者 プロフィール

<中澤 真弥氏>
看護師として働きながら、フリーライター、看護大学教員、介護講師、メディカルマーケティング、ライター育成事業など幅広く活動中。
女性のワークバランスや働き方を改革する必要性を感じ、各メディアで発信、講演も行う。また、医療や介護の未来を変えるべくイベントを立ち上げ、医療、介護、地域とのつながりをつくり、自分らしくイキイキ働ける社会や次世代へつなげるための未来を目指している。

監修者

<藤井 寿和氏>
合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
陸上自衛官を経験後、介護の仕事に転身。医療法人の事業部統括マネージャーに就任した後、独立。

● 介護施設 現場支援コンサルタント
● レクリエーション介護士1級・2級 公認講師
● 介護情報誌「介護Times Tokyo」および「TOWN介護Tokyo」編集長

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